2015年19歳以下女子日本代表・永島ヘッドコーチインタビュー
2015/07/16
2015年7月23日(木)~8月1日(土)、英国・スコットランド・エディンバラで第6回FIL女子19歳以下(以下、U19)世界選手権大会が開催される。本番まで、あと1週間。女子19歳日本代表・永島正和ヘッドコーチに、今の心境をお聞きした。
寺本:まもなく女子U19世界選手権大会が開幕しますが、大会に向けた調整は順調でしたか?
永島:約10回しかない練習会でチームをつくるのは初めての経験だったので、当初は、世界選手権直前にチームが完成するようなプログラムを組んでいましたが、NPC(日本代表プロジェクト推進委員会)・大久保代表から、「開始1か月で勝つチームをつくることができないと間に合わない」とアドバイスを頂き、大幅なプログラム変更を行い、早期から大学・社会人のトップチームと試合を重ねたことで、調整は順調にいきました。
寺本:フル代表だと代表活動では選手を育成することよりも出来上がった選手をどう使っていくかを考えますが、U19の活動ではまだ選手の育成に時間をあてると思います。選手の個としての強さを育成するためにどのような指導をされていますか?
永島:ラクロス歴1年の選手たちは、良いところ探しに徹します。短期間で、ラクロス未経験者が成長するには、長所を伸ばし自信を付けることが大切です。またティーンズの選手たちは、逆にあまり良くないところを探します。経験者は癖が強く、この時期で既に伸び悩むことが多いため、できるだけ早くその癖を改善することに努めます。
寺本:よく分かりました。永島HCは10年以上の指導歴となりますが、指導者として大事にしているポリシーは何ですか?
永島:「弱が強に勝つために」何をすべきか具体的に明確にすることは大事なポリシーです。また、選手やチームが何か上手くいかない場合は、自らに責任があることを理解し、直ちに改善することに努めています。
寺本:そうですね。選手が上手くプレイできない時に指導者がとるスタンスでその選手の未来は決まると言っても過言ではないです。特に若年層の指導では、それが顕著に現れます。そもそも、永島HCにとってコーチングとはどういったものなのでしょう?
永島:宝探しです。私は事前に準備するタイプではなく、その場で選手と一緒に宝を探し、もし私の方が先に見付けたら、その場所をより分かり易く選手に伝えます。そして、嘘つきな面もあります。あえて間違った答えを提案することで、選手により多くのことを考え、自ら答えを探して貰いたいからです。
寺本:繰り返しの部分もあるかと思いますが、今年も全国各地区で多くの新入生がラクロス部に入部しました。そういった若い世代に教えたいラクロス上達へのアドバイス(新入生の育成の秘訣)をお願いします。
永島:憧れを目標に変えることです。私自身も新入生のころ、U19日本代表やフル代表の選手の試合を見て、強い憧れを持ち、ラクロス部に入部しました。しかし、ここで大切なのは、あの人のようになりたい!ではなく、あの人を超えたいと思うことです。現U19の選手たちも、関東学生・社会人のトップチームやU22という格上の相手との試合を多く経験することで、憧れがいつの間にか、この人たちに「勝つ」という目標に変わりました。つまり、新入生には憧れとなるものを見て貰う機会を準備することと、そしてそこへ飛び込む(練習に参加させて頂く等)勇気と環境(先輩たちのバックアップ)が必要だと思います。
寺本:さて、いよいよ世界選手権大会(以下、世界選手権)まで1週間となりました。世界選手権では、ここに注目して欲しいといったPRポイントを教えて下さい。
永島:私たちは、スター選手の集まりではありません。今回の大会出場基準を満たしている全国の選手の中で、誰よりも努力し、誰よりも走ってきたと自負する選手たちの集まりです。それは、まさに「弱が強に勝つために」に必要なことですので、そういった選手たちが試合中起こり得るすべてのその一瞬一瞬に勝つために、全力で挑む姿に注目して頂きたいと思います。
寺本:やろうとしているラクロス。世界と戦うための強化方針で特化したことは何ですか?
永島:コンセプトは、「一瞬の最速をつくり、一瞬の最速を奪う」です。簡単に言いますと、いかなる局面においても、その一瞬一瞬において、自分が相手よりもハヤクなる方法を個々が増やすことで、チームは最速のラクロスを生み出す!!逆に言えば、一瞬の最速を相手から奪うことが大切となるということを言い続けています。
寺本:その中でも、チーム力で一番力を付けたと思えること(選手の成長を一番感じた部分)は何ですか?
永島:インターセプトですね。相対的最速を意識することで、セットディフェンスになる前や、クリアーをされる前に、いかに個と個で限定と予測をして相手のパスを奪うかに力を入れましたが、これは柴田アシスタントコーチの得意とするチャレンジを伴うプレイのため、徹底した柴田イズムで選手は一番力を付けたと思います。
[左:国際親善試合エキシビション/右:試合でインターセプトを狙うU19日本代表の選手]
寺本:今回のU19のコーチ陣は永島HCも含めフレッシュな顔ぶれとなっていますが、何か新しいことへの挑戦、もしくは特徴的な練習メニューといったようなものがありますか?
永島:HCが3名いるようなスタイルです。最終的な答えは3名同じでも、そこに至る過程はそれぞれ違います。本来、それは選手に混乱を与えることになりかねますが、逆にこれを強みに変えようと考えました。つまり、それはバラバラを意味するものではなく、それぞれの得意分野に分かれてメニューや指導を行うことで効率化を図りました。
寺本:例えばその指導方法は、ひとつの練習会の現場でどのように行われているのですか?
永島:フィールドの半面では、柴田ACが、ディフェンスがオフェンスの一瞬の最速を奪う練習をしているとします。そして、もう半面では、敷浪ACが、オフェンスがディフェンスを利用して一瞬の最速をつくる練習をしているわけです。私は、そのどちらも行き来し、矛盾が生じていないかの確認や要望を出すことで、少人数を細かく見ることができました。また、一般的なスタイルである、私がやりたいラクロスを提案し、チームの頭脳である敷浪ACがそれを考慮したメニューをつくり、フル代表経験者で現役トッププレイヤーである柴田ACが実際にプレイしながら細かく説明し、答えを導くことも当然やっています。
[左:(左から)永島HC、敷浪AC、柴田AC/右:柴田AC(手前)・敷浪AC(奥)が個別にメニューを行う]
寺本:今大会は過去最高の14ヶ国(地域)が参加しています。日本はPoolCで、初戦のニュージーランド戦も大事ですが、イスラエルなども難敵ですよね?
永島:初参戦のチームは、過去の情報が無い分怖いですが、U19の世界選手権という大会は、ほとんどの選手が初出場だと思うので、個がそれをしっかり理解し、あとは私たちスタッフ陣が現地で十分なスカウティングを実施し、様々な想定をすることで、イスラエル等に勝利したいと考えます。やはり一番大切なのは、スカウティングのできない初戦のニュージーランド戦となります。
寺本:世界選手権での戦い方について聞かせて下さい。各国でも若年層の選手が増える中、世界的に見ても前大会からの4年間が過去最も進化した4年間だったと思います。特にこの年代は日々変化のある世代なので大会期間中の良い変化にも期待したいですが。
永島:ティーンズ選手を過去最多選出しております。この4年間で、ティーンズの指導者に現役代表選手等が就くことが多く、ティーンズのレベルは確実に上がっています。しかし、世界大会ではそのティーンズたちの通じるプレイ幅は僅かだと思います。それを予測した上で、あえて起用し成功した時のチームの勢いは計り知れないと考えます。また、ティーンズ選手がいることで、大学2年生たちに先輩としての落ち着きが出ています。それは、プレイでも表れているため、大学生とティーンズを上手くフュージョンさせて、戦いたいと考えます。
寺本:ずばり大会での目標は?
永島:勿論、やるからには過去最高の成績です。しかしながら、冷静に分析し現実を見ることが大切です。現在、U19世代で特出しているのは、アメリカだけだと思いますが、日本は、その次のランクのオーストラリア・カナダ・イングランド・ウェールズ・スコットランドより、もう一ランク下と考えています。ただし、アメリカ以外は、絶対に勝てない相手ではありません。ですから、過去最高順位の銀メダルを目指します(*)。皆様、応援宜しくお願いします!
(U19女子日本代表の過去最高成績は5位)
[左:選手たち/右:コーチ・スタッフ陣]
■永島 正和(ながしま まさかず)
1978年、福岡生まれ。佛教大学男子ラクロス部出身。37歳。
【コーチ歴】
2003~2004年;西南学院大学(男子) HC
2007~2011年、2014~2015年;福岡大学(女子) HC
2008~2010年;Crazy Scorpions HC
2013~2015年;alfa HC
Interview by:日本ラクロス協会事務局次長(関西地区)・寺本香
Photo by:日本ラクロス協会オフィシャルフォトグラファー・海藤秀満、同広報部・前田浩一、大木佳奈、瀧ヶ平絵里、川瀬萌、2015年度19歳以下女子日本代表マネージャーリーダー・関田都
寺本:まもなく女子U19世界選手権大会が開幕しますが、大会に向けた調整は順調でしたか?
永島:約10回しかない練習会でチームをつくるのは初めての経験だったので、当初は、世界選手権直前にチームが完成するようなプログラムを組んでいましたが、NPC(日本代表プロジェクト推進委員会)・大久保代表から、「開始1か月で勝つチームをつくることができないと間に合わない」とアドバイスを頂き、大幅なプログラム変更を行い、早期から大学・社会人のトップチームと試合を重ねたことで、調整は順調にいきました。
寺本:フル代表だと代表活動では選手を育成することよりも出来上がった選手をどう使っていくかを考えますが、U19の活動ではまだ選手の育成に時間をあてると思います。選手の個としての強さを育成するためにどのような指導をされていますか?
永島:ラクロス歴1年の選手たちは、良いところ探しに徹します。短期間で、ラクロス未経験者が成長するには、長所を伸ばし自信を付けることが大切です。またティーンズの選手たちは、逆にあまり良くないところを探します。経験者は癖が強く、この時期で既に伸び悩むことが多いため、できるだけ早くその癖を改善することに努めます。
寺本:よく分かりました。永島HCは10年以上の指導歴となりますが、指導者として大事にしているポリシーは何ですか?
永島:「弱が強に勝つために」何をすべきか具体的に明確にすることは大事なポリシーです。また、選手やチームが何か上手くいかない場合は、自らに責任があることを理解し、直ちに改善することに努めています。
寺本:そうですね。選手が上手くプレイできない時に指導者がとるスタンスでその選手の未来は決まると言っても過言ではないです。特に若年層の指導では、それが顕著に現れます。そもそも、永島HCにとってコーチングとはどういったものなのでしょう?
永島:宝探しです。私は事前に準備するタイプではなく、その場で選手と一緒に宝を探し、もし私の方が先に見付けたら、その場所をより分かり易く選手に伝えます。そして、嘘つきな面もあります。あえて間違った答えを提案することで、選手により多くのことを考え、自ら答えを探して貰いたいからです。
寺本:繰り返しの部分もあるかと思いますが、今年も全国各地区で多くの新入生がラクロス部に入部しました。そういった若い世代に教えたいラクロス上達へのアドバイス(新入生の育成の秘訣)をお願いします。
永島:憧れを目標に変えることです。私自身も新入生のころ、U19日本代表やフル代表の選手の試合を見て、強い憧れを持ち、ラクロス部に入部しました。しかし、ここで大切なのは、あの人のようになりたい!ではなく、あの人を超えたいと思うことです。現U19の選手たちも、関東学生・社会人のトップチームやU22という格上の相手との試合を多く経験することで、憧れがいつの間にか、この人たちに「勝つ」という目標に変わりました。つまり、新入生には憧れとなるものを見て貰う機会を準備することと、そしてそこへ飛び込む(練習に参加させて頂く等)勇気と環境(先輩たちのバックアップ)が必要だと思います。
寺本:さて、いよいよ世界選手権大会(以下、世界選手権)まで1週間となりました。世界選手権では、ここに注目して欲しいといったPRポイントを教えて下さい。
永島:私たちは、スター選手の集まりではありません。今回の大会出場基準を満たしている全国の選手の中で、誰よりも努力し、誰よりも走ってきたと自負する選手たちの集まりです。それは、まさに「弱が強に勝つために」に必要なことですので、そういった選手たちが試合中起こり得るすべてのその一瞬一瞬に勝つために、全力で挑む姿に注目して頂きたいと思います。
寺本:やろうとしているラクロス。世界と戦うための強化方針で特化したことは何ですか?
永島:コンセプトは、「一瞬の最速をつくり、一瞬の最速を奪う」です。簡単に言いますと、いかなる局面においても、その一瞬一瞬において、自分が相手よりもハヤクなる方法を個々が増やすことで、チームは最速のラクロスを生み出す!!逆に言えば、一瞬の最速を相手から奪うことが大切となるということを言い続けています。
寺本:その中でも、チーム力で一番力を付けたと思えること(選手の成長を一番感じた部分)は何ですか?
永島:インターセプトですね。相対的最速を意識することで、セットディフェンスになる前や、クリアーをされる前に、いかに個と個で限定と予測をして相手のパスを奪うかに力を入れましたが、これは柴田アシスタントコーチの得意とするチャレンジを伴うプレイのため、徹底した柴田イズムで選手は一番力を付けたと思います。
[左:国際親善試合エキシビション/右:試合でインターセプトを狙うU19日本代表の選手]
寺本:今回のU19のコーチ陣は永島HCも含めフレッシュな顔ぶれとなっていますが、何か新しいことへの挑戦、もしくは特徴的な練習メニューといったようなものがありますか?
永島:HCが3名いるようなスタイルです。最終的な答えは3名同じでも、そこに至る過程はそれぞれ違います。本来、それは選手に混乱を与えることになりかねますが、逆にこれを強みに変えようと考えました。つまり、それはバラバラを意味するものではなく、それぞれの得意分野に分かれてメニューや指導を行うことで効率化を図りました。
寺本:例えばその指導方法は、ひとつの練習会の現場でどのように行われているのですか?
永島:フィールドの半面では、柴田ACが、ディフェンスがオフェンスの一瞬の最速を奪う練習をしているとします。そして、もう半面では、敷浪ACが、オフェンスがディフェンスを利用して一瞬の最速をつくる練習をしているわけです。私は、そのどちらも行き来し、矛盾が生じていないかの確認や要望を出すことで、少人数を細かく見ることができました。また、一般的なスタイルである、私がやりたいラクロスを提案し、チームの頭脳である敷浪ACがそれを考慮したメニューをつくり、フル代表経験者で現役トッププレイヤーである柴田ACが実際にプレイしながら細かく説明し、答えを導くことも当然やっています。
[左:(左から)永島HC、敷浪AC、柴田AC/右:柴田AC(手前)・敷浪AC(奥)が個別にメニューを行う]
寺本:今大会は過去最高の14ヶ国(地域)が参加しています。日本はPoolCで、初戦のニュージーランド戦も大事ですが、イスラエルなども難敵ですよね?
永島:初参戦のチームは、過去の情報が無い分怖いですが、U19の世界選手権という大会は、ほとんどの選手が初出場だと思うので、個がそれをしっかり理解し、あとは私たちスタッフ陣が現地で十分なスカウティングを実施し、様々な想定をすることで、イスラエル等に勝利したいと考えます。やはり一番大切なのは、スカウティングのできない初戦のニュージーランド戦となります。
寺本:世界選手権での戦い方について聞かせて下さい。各国でも若年層の選手が増える中、世界的に見ても前大会からの4年間が過去最も進化した4年間だったと思います。特にこの年代は日々変化のある世代なので大会期間中の良い変化にも期待したいですが。
永島:ティーンズ選手を過去最多選出しております。この4年間で、ティーンズの指導者に現役代表選手等が就くことが多く、ティーンズのレベルは確実に上がっています。しかし、世界大会ではそのティーンズたちの通じるプレイ幅は僅かだと思います。それを予測した上で、あえて起用し成功した時のチームの勢いは計り知れないと考えます。また、ティーンズ選手がいることで、大学2年生たちに先輩としての落ち着きが出ています。それは、プレイでも表れているため、大学生とティーンズを上手くフュージョンさせて、戦いたいと考えます。
寺本:ずばり大会での目標は?
永島:勿論、やるからには過去最高の成績です。しかしながら、冷静に分析し現実を見ることが大切です。現在、U19世代で特出しているのは、アメリカだけだと思いますが、日本は、その次のランクのオーストラリア・カナダ・イングランド・ウェールズ・スコットランドより、もう一ランク下と考えています。ただし、アメリカ以外は、絶対に勝てない相手ではありません。ですから、過去最高順位の銀メダルを目指します(*)。皆様、応援宜しくお願いします!
(U19女子日本代表の過去最高成績は5位)
[左:選手たち/右:コーチ・スタッフ陣]
■永島 正和(ながしま まさかず)
1978年、福岡生まれ。佛教大学男子ラクロス部出身。37歳。
【コーチ歴】
2003~2004年;西南学院大学(男子) HC
2007~2011年、2014~2015年;福岡大学(女子) HC
2008~2010年;Crazy Scorpions HC
2013~2015年;alfa HC
Interview by:日本ラクロス協会事務局次長(関西地区)・寺本香
Photo by:日本ラクロス協会オフィシャルフォトグラファー・海藤秀満、同広報部・前田浩一、大木佳奈、瀧ヶ平絵里、川瀬萌、2015年度19歳以下女子日本代表マネージャーリーダー・関田都
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